コンクリート補修工事
コンクリート構造物には経年変化によって、避けられないコンクリートの様々な不具合、劣化が生じます。
コンクリートの補修工事とは、劣化した部材あるいは構造物の今後の劣化進行を抑制し、耐久性の回復・向上と第三者影響度(劣化した構造物の周囲において剥落コンクリートなどが人および器物に与える損傷などの影響度合い)の除去または低減を目的とした対策工事のことを言います。
主なコンクリート補修工法の種類
コンクリート補修工法は、部材または構造物の耐荷性や剛性などの力学的な性能低下を回復または向上させることを目的とした対策です。
補修工事は、部材または構造物の劣化要因・程度に応じた適切な補修工法や材料を選択し、実施されます。
現在、実施されている補修工法を分類してまとめると左図のようになります。
通常、これらの工法は、構造物の変状の種類、劣化機構、劣化の程度に応じて、単独もしくはいくつかの工法を併用して実施されています。
各補修工法は、以下のような事項を主たる目的としている。
①有害物質の再浸入を防止する表面被覆
②塩化物イオンの再浸入や中性化によって劣化因子を取り込んでしまったコンクリートの除去、断面修復
③ひび割れや剥離といったコンクリート構造物の変状を修復し、内部鉄筋の腐食やひび割れ周辺部コンクリートの劣化進行の抑制
④コンクリート中の鋼材の不働態化あるいはコンクリート中の塩化物減少、アルカリ性の回復
補修工法の一例
表面被覆工法
コンクリート構造物の表面を樹脂系やポリマーセメント系の材料で被覆することにより、水分、炭酸ガス、酸素および塩分などを遮断して、劣化の進行を抑制し、コンクリート構造物の耐久性を向上させる工法です。
表面被覆工法に用いる被覆材は、コンクリート中への塩化物イオン、二酸化炭素、水分、酸性雨などの鉄筋に有害な物質の浸入を抑制することによって、躯体の保護、耐久性改善ならびに美観の回復を図るものでその種類は、構造物の種類、目的、環境になどに応じ様々なものが使用されます。
断面修復工法
断面修復工法は、コンクリート構造物が劣化により元の断面を喪失した場合の修復や、中性化、塩化物イオンなどの劣化因子を含むかぶりコンクリートを撤去した場合の断面修復を目的とした補修工法です。
断面修復は、施工条件や補修規模により、左官工法、モルタル注入工法、コンクリート充填工法、吹き付け工法(湿式、乾式)で実施されます。
断面修復工法は、一般に、プライマーあるいは鉄筋防錆材などの下塗りと、断面修復材による欠損部充填の2工程で実施されます。
ひび割れ補修工法
ひび割れ補修工法は、防水性、耐久性を向上させる目的で行われる工法です。 その種類には、ひび割れ被覆工法、注入工法、充填工法などがあります。
注入工法は、防水性および耐久性を向上させる目的のほかに、使用材料によっては、躯体の一体化を図ることも可能なため、コンクリート構造物全般に発生したひび割れ補修工法として最も普及している工法です。
電気化学的防食工法
電気化学的防食工法には、電気防食工法、脱塩工法、際アルカリ化工法、電着工法があります。
電気防食工法は、主として塩害により劣化した構造物を対象とし、補修目的はコンクリート中の鉄筋の腐食反応を呈させる工法です。
脱塩工法は、塩害により劣化した構造物を対象とし、外部電極をコンクリート中の鋼材との間に直流電源を流し、コンクリート中の塩分を取り出す方法です。
再アルカリ化工法は、中性化により劣化した構造物を対象とし、直流電流を流しアルカリ性溶液をコンクリート中に強制浸透させて、アルカリ性を回復させる工法です。
電着工法は、ひび割れによって鋼材の腐食が懸念される海中構造物に使用すると利点がある工法です。